大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

甲府地方裁判所 昭和60年(わ)85号 判決 1985年6月21日

本籍

山梨県南都留郡山中湖村平野一一五番地

住居

同村平野四六九番地の二

旅館業

長田德壽

昭和一五年四月二二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官圓山慶二出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することがでさないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、山梨県南都留郡山中湖村平野四六九番地の二において、「井戸前旅館」の名称で民宿業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五六年分の実際総所得金額が三、九四六万一、六二三円あったのにかかわらず、昭和五七年三月一五日、山梨県大月市駒橋一丁目一〇番二号所在の所轄大月税務署において、同税務署長に対し、昭和五六年分の総所得金額四六六万一、一三五円でこれに対する所得税額が五〇万七、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一、七〇四万八、三〇〇円と右申告税額との差額一、六五四万四〇〇円を免れ

第二  昭和五七年分の実際総所得金額が三、六七〇万四九二円あったのにかかわらず、昭和五八年三月一五日、前記大月税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年分の総所得金額が四九九万七、九八四円でこれに対する所得税額が五六万二、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一、五七四万六、二〇〇円と右申告税額との差額一、五一八万四、四〇〇円を免れ、

第三  昭和五八年分の実際総所得金額が四、六四三万八、三四〇円あったのにかかわらず、昭和五九年三月一五日、前記大月税務署において、同税務署長に対し、昭和五八年分の総所得金額が七五一万三、六四一円でこれに対する所得税額が一一〇万一、三〇〇円である旨の虚儀の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二、一三六万五、〇〇〇円と右申告税額との差額二、〇二六万三、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示各事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通

一  長田育子、長田為子、長田龍藏、植松茂、小林千春、長田房治、高村官治及び成瀬純一の検査官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の利子所得調査書、現金調査書、普通預金調査書、定期積金調査書、定期預金調査書、郵留貯金調査書、郵便定額貯金調査書、未収金調査書、商品調査書、前払金調査書、貸付金調査書、保険積立金調査書、建物調査書、建物付属設備調査書、車両調査書、備品調査書、未払金調査書、借入金調査書、事業主貸勘定調査書、事業主借勘定調査書、事業専従者控除調査書、申告所得調査書、雑所得調査書、医療費控除調査書及び社会保険料控除調査書

一  押収してある所得税青色申告決算書三綴(昭和六〇年押第三一号の一、三及び五、同号の一は判示第一、同号の三は判示第二、同号の五は判示第三の各事実につき)及び所得税確定申告書三枚(同号の二、四及び六、同号の二は判示第一、同号の四は判示第二、同号の六は判示第三の各事実につき)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するが、いずれも所定刑中懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、以上の刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一、〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 片岡博)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例